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Special_episode 01震災直後の卒園式

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  • Printpac Side
episode 01 / SIDE A Customer

一生に一度の思い出。

秋田県 幼稚園教諭 Aさん(27歳)

 忘れもしない2011年3月11日。東日本大震災が発生。東北地方は大きな被害を受けました。同じ東北でも私の住む秋田のいなか町は大きな被害もなく、次の日からいつもの日常に戻りました。
いつもと変わらない園児たちの姿。
私は昨日と同様、卒園式の準備に追われていました。
 それから数日。卒園式まで、あと五日に迫った日のことでした。卒園アルバムの印刷をお願いしていたプリントパックさんからメールが届きました。
東日本大震災の影響で交通網がストップ。東北地方への配送に大幅な遅れが出ているとのことでした。

 卒園式に間に合わない。

 幼稚園の思い出が詰まったアルバム。子どもたちだけじゃなく、お母さんも、お父さんも、そして私たちも、それを楽しみにしていました。一生のうちで一度しかない卒園式。アルバムを受け取ったことも、その日の思い出として残してあげたかった。園庭で元気に遊び回る子どもたちの姿を見ると、申し訳ない気持ちでいっぱいになり、涙が溢れました。

 「なんとかなりませんか。子どもたちの思い出が詰まってるんです」。
仕方がないことは理解していました。でも、心のどこかに諦めきれない自分がいて、気付いたときには泣きながらプリントパックさんに電話をしていたんです。

 「なんとかできそうです!」。
 何度かのやり取りの後、空路とバイク便を使えば、前日の夕方までに届けられるとのお返事をいただきました。あのとき、困っていたのは自分だけじゃない。日本中が混乱する中で見過ごされても仕方ないようなお願いを親身になって聞いてくださった。その心のこもった対応に感動し、また涙が溢れました。
 卒園式の日。一人ひとりに手渡されたアルバム。それを見て無邪気に笑う園児に、涙を浮かべるお母さん。プリントパックさんのおかげで、私にとっても一生に一度の思い出深い一日になりました。

episode 01 / SIDE B Printpac

桜の季節に届く恩返し。

京都本社 営業課 T.K(41歳)

 東日本大震災が起きた3月11日以降、私はお客さまの対応に追われていました。鳴り止まない電話。次から次に寄せられる配送状況のお問合せに、一つひとつお応えしているうちにあっという間に一日が終わってしまう。そんな状況でした。

 「いつもありがとうございます。プリントパックです」。
そのときも、いつものように受話器を取りました。
 「もしもし」。「もしもし」。
何度か呼びかけても、返事はありません。代わりに返ってきたのは、すすり泣く声でした。ただ事ではない。咄嗟にそう感じた私は、電話を切らず、お客さまが冷静になられるのを待ちました。
 お話を伺ってみると、ご依頼いただいていた卒園アルバムが震災による配送の遅延で式当日に間に合わなくなってしまったとのこと。一生に一度の卒園の日に、どうにかして間に合わせてあげたい。幼稚園の先生からの切実な願いでした。

 お客様の幸せに貢献する。
 それが、私たちの使命。

 「なんとかします!」。
 気付いたら、そう答えている自分がいました。現場に確認をしてみると、式の二日前には刷り上がるとのこと。そこからすぐに運送業者さんへバトンを渡すことができれば、間に合うかもしれない。依然として東北への交通網が遮断され、物流が大混乱を起こす中、私は一縷の望みを託してかたっぱしから日本中の業者さんに連絡を取りました。
 「印刷後、すぐに出荷できれば、空路とバイク便を使って前日の夕方に届けられる」。

 ある秋田の業者さんが、そう答えてくれました。ただし、運賃は今回の印刷費をはるかに上回ります。利益を取るか。一生に一度の思い出を取るか。私は迷うことなく、後者を取りました。そして、一分たりともロスが発生しないよう関連各所に事情を説明して回り、万全の体制を整えたのでした。

 式前日の夕方。私はお客さまのことが気にかかり、幼稚園に電話をしました。
「間に合いました。本当にありがとうございます」。
お客さまは電話をかけてこられたあの日以上に泣かれていました。

 それからのこと、毎年桜の季節が近づくと秋田の幼稚園から卒園アルバムのオーダーがやってきます。そのたびにこの仕事の意義深さを改めて感じ、また明日も頑張ろうという気持ちになります。